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カカオの主な効用は、それからチョコラーテというおかしげな飲物を作ることである。これは、あの地方で愛好される奇妙きてれつなしろもので、慣れていない人の中には、見ただけで吐き気をもよおす人がいる。なにしろ上に泡が浮き、糞かすのようなものが煮えたぎっているのだから、よほど念を押さない限り、安心して飲めない。だが、結局は愛好される飲物で、インディオでもエスパニャ人でも、自分の土地を通る主人たちに、これを捧げる。また、この地方に慣れたエスパニャ人の女性たちは、この黒いチョコラーテが死ぬほど好きなのである。このチョコラーテは、いろいろなやり方で、温度を変え、熱くしたり、冷たくしたり、温くしたりして作るそうだ。香料や、たくさんのチリを入れるのもふつうだし、粉状に練ったりもするが、これは胸の病に効くし、胃にもよく、カタルの薬でもある。しかしいろいろ効能書きをならべても、実際右のようなことを聞いて育たなかった人には、飲む気はおこらぬ。(アコスタ『新世界自然文化史』より)
上に引いた文章は1590年に刊行されたものですが、昔からチョコレートは特に女性に愛好されるものだったんですね。ことによると、日本でバレンタインデーに便乗したのはチョコレート業界だったというのにも、その辺が関係しているのかも。いや、甘くて綺麗なお菓子なんて、そりゃ男性でも好きな人は多いでしょうが、普通は女性の方がよりそういうものを好むと考えられてますよね。男性への贈り物と言いつつ、女性が興味を持ちそうなものを売り込むというのが……実際、女友達や自分のためにもチョコを買う女性も多いですし。かく言う私も、この時期はいろいろな種類のチョコが売られているので楽しみです。
もっとも、これ↓はバレンタイン関係なく、単にチョコが好きだからと買ってみたものです。

「コルテス80%」。スペイン王室御用達のショコラテリア・カカオサンパカが販売しているチョコレートドリンクです。マグカップが中身に対して激しく不適切ですが、気にしないでください。「アステカ時代のレシピを彷彿とさせる」と商品説明にありましたが、そんなアイテムにコルテスの名を冠するとは、さすがスペインと言うべきなのか。
お味もさすがです。カカオ80%のビターチョコに隠し味のスパイス入りで、濃厚だけど甘すぎず飲みやすいです。もっとも、かなり濃厚なので、普通のココアの方が慣れているという人は牛乳に対してチョコフレークの割合を減らした方がいいでしょう。規定の分量で作ったものは「とろっ」というか「どろっ」というか、とにかく濃いので。私の場合は、特に疲れたときなどに濃い目のホットチョコレートを飲むと元気になれる気がするので、たまにこういうのが欲しくなるという感じでしょうか。そんなにしょっちゅう飲むものではない気がします。で、たまにだからこそいいものを、なんて。
同じお店の、かつて王だけが食べることのできた幻のカカオ”レアルクリオロ種カカオ”を使用したという「ショコヌスコ」もいつか食べてみたいです。表面にマヤ文字が書かれているのも素敵。4粒で1,890円だなんてお値段も素敵だけど。

ところで、冒頭で引用した『新大陸自然文化史』もそのうちの1冊ですが、あまりにも繰り返し繰り返し図書館で借り続けているため「これはもう買った方がよさそうだ」と思った本を先日4冊買いました。
アイリーン・ニコルソンの『マヤ・アステカの神話』もまたそのうちの1冊なんですが、しかしこの本もどれだけ信用していいものか悩ましいです。私の好みには合わないのでついつい厳しい目で見てしまうということは否定しませんが(しかし日本語で読めるメソアメリカ神話関係の本としてはやはり押さえておきたかったので購入した)、資料の引用元が明確にされていないことが多いのはそれを抜きにしても好ましくないと思います。元ネタが判るものでも引用の仕方がいささか不誠実な場合があるため、どうしても全体を懐疑的に見てしまいます。たとえば、ウェマクをすべてケツァルコアトルにまとめてしまっているようだとか、ケツァルコアトルがモグラとコヨーテと鷲と狐の助けを借りて父の骨を取り戻したというエピソードを紹介する際、ケツァルコアトルは彼の敵を生贄にして食べてしまったというその後の展開を意図的に省いているようだとか、どうもあちこちで引っかかるんですよ。また、「至高神はタタとネナを人間の組合わせとして送り、彼らに大きな木のなかに穴を作り、そのなかに隠れるようにと言った」とありますが、この話の元は『太陽の伝説』の「第四の太陽」のエピソードですよね。何故テスカトリポカの名を出さず至高神という語でぼかす必要があったんでしょうか? この本は全体的にケツァルコアトルを重視している(私のような者には「贔屓している」と感じられるほどに)んですが、その辺りと関係しているのかもと考えるのは邪推なのかそうではないのか。
こういうこともあるから、極力原典に近づきたいという欲求が抑えられないんですよね……私はあまりにも知識を持たなすぎる。
とまぁそんな訳で、この本に書かれているテスカトリポカがショチケツァルと恋に落ちた時に歌ったという歌の出典が何なのか知りたいです。『Historia de Tlaxcala』には書かれてないっぽいしなぁ……。

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