Tasteless Blog

GWも終わりましたね。私は美術館や動物園などに行ったり里帰りしたり筍を茹でたりといろいろ忙しくしておりました。
『古代七つの文明展』感想も書きたいですが、今回の記事は前々から書く書くと言いつつなかなか書き上がらなかったアステカ神話ネタ。予告してから1ヶ月以上経ってしまったなぁ……。
それから、「続きを読む」で拍手返信しております。
 
 

以前、ツイッターでヨワルテクトリの話題が出たんでちょっと調べてみました。
『ヴィジュアル版世界の神話百科アメリカ編』のヨワルテクートリの項目には「「ヨワルトナティウ」と呼ばれることもある。字義は「夜の神」。太陽神トナティウの配偶神であり、それゆえ「夜の太陽」でもある。太陽と金星が地下世界で一緒になって、宇宙的な日々のサイクルが終わると信じられていたため、双方の天体の神ともみなされていた。またトシウモルピリア祭の重要な儀式である人身供犠をはじめる際、真夜中に天頂に出現するプレアデス星団の星のひとつは、ヨワルテクートリにみたてられた。通常、この神は暗闇や真夜中、さらに周期の終焉を象徴し、世界の方位では、四方位のひとつではなく、中心を司るとされていた」とあったんですが、しかしこれ一体ソースどこよ?と悩んでおります。とりあえず手持ちの資料を漁ることにしましたが、『ヴィジュアル版~』には参考文献リストがないので元ネタ搜索の難易度が高いです……。
 

それでは、私の手持ちの資料にはどんな情報が載っていたのかと言いますと、まずサアグンの『プリメーロス=メモリアーレス』には、「4の動き」の日、太陽が沈むと人々は香を焚いて夜を迎え、「夜の主ヨワルテクトリ尖った鼻の者ヤカウィツトリが現れた。何が彼の御業をなさしめるのか?」と言ったそうです。また同書の別のページの「新しい火の儀式」を告げる星座ママルワストリ(火鑽)についての記述にも、やはりヨワルテクトリ及びヤカウィツトリへの呼び掛けが引用されています。私が持っているナワトル語‐英語対訳版『プリメーロス=メモリアーレス』ではヨワルテクトリ=ヤカウィツトリとして1柱の神として扱っているようですが、後述するナワトル語‐英語対訳版『フィレンツェ絵文書』ではヨワルテクトリとヤカウィツトリはそれぞれ独立した神としていますね。『ヌエバ=エスパーニャ総覧』(『フィレンツェ絵文書』のスペイン語テキスト)では「Yoaltecutli y Yacauiztli」になっているからやっぱり別々とした方がいいんでしょうか? とまれ、ヨワルテクトリとヤカウィツトリはママルワストリの星みたいです。ママルワストリが現代の星座の何にあたるのかにはオリオン座のベルトと短剣だとか牡牛座のプレアデス星団それともヒアデス星団はたまたアルデバランだとか双子座のカストルとポルックス(カストルがヨワルテクトリでポルックスがヤカウィツトリ?)だとか諸説ありますが、とにかくその辺の何かのようです。
 

同じサアグンによる『フィレンツェ絵文書』では、天文・気象に関する記述を集めた第7書第3章のママルワストリについての記述によると、ヨワルテクトリとヤカウィツトリが現れたとき人々は香を捧げ「何が夜をもたらすのか? いかにして夜は明けるのか?」と言ったそうです。また、同書のスペイン語テキストではママルワストリはmastelejos(小さな棒)となってますが、これを英訳版では「Castor and Pollux」としている模様。でもこれはあくまで訳者による解釈のようです。
また、ヨワルテクトリは『フィレンツェ絵文書』第6書にて蒸し風呂の祖母テマスカルテシこと夜の助産婦ヨワルティシトルと共に名を挙げられてもいます。夫婦なのかどうかは明言されてませんが、「汝の母、汝の父ヨワルテクトリ、ヨワルティシトル」と書かれてました。語順がちょっとおかしいような気もしますが、でもヨワルティシトルは祖母っていうぐらいだから女でしょう。だからヨワルテクトリは男でしょう。この辺スペイン語テキストでは「汝の母と汝の父ヨワルテクトリ、 夜 の 主 エル セニョール デ ラ ノーチェ、そしてヨワルティシトル、 浴 場 の 女 神 ラ ディオサ デ ロス バニョス」といった風に書かれてます。
(「ヨワルティシトルって夜の貴婦人じゃなかったっけ?」という疑問については過去記事「狐の嫁入り」「義憤と私欲」にて書いてますが、その後は進展がなく…資料求む!)
ついでに言うと、同じ章のちょっと前の部分に「汝の母、汝の父、トナティウ、トラルテクトリ」と書かれているので、トナティウの配偶神かはともかく、トラルテクトリが彼の対として扱われることがあったということは判ります。
 

そうそう、ヨワルテクトリは夜の太陽だという説の出処は、どうやらゼーラーによる『ボルジア絵文書』の解説のようです。でもゼーラー、ヨワルテクトリのこと「der Gott der Nacht(夜の神)」「der Sonnengott in Unterwelt(冥界の太陽神)」とは書いてますが、「die Göttin(女神)」と女性形にはしてないんですよね。しかし、第40葉ではいわゆる「出産のポーズ」で描かれているため、『ヴィジュアル版~』では女性とされたということも考えられます。
それはともかく、ゼーラーがヨワルテクトリだとしているのが何者かについては研究者の間でも解釈が分かれているようです。例えば、ペーパーバック版『ボルジア絵文書』の解説を書いたブルース=E.=バイランドによれば、第35葉の神殿他あちこちにいるのは神ヨワルテクトリではなくゴーグル状の目の仮面を着けた神官、第40葉上段中央で体に着けた9つの太陽円盤を切り裂かれているのはトナティウだとしてます。また、エリザベス=ヒル=ブーンの説では、第35葉で闇の神殿の中からケツァルコアトルに包みを渡しているのはヨワルテクトリだが第40葉上段中央の黒い太陽(夜の太陽)は彼の手足の斑点や瘤によりナナワツィンに同定されるとのこと(まぁナナワツィンならつまりトナティウなんでしょうが)。
言われてみれば、第35葉のゴーグル着けてるっぽいのと第40葉の心臓えぐられながら何か言うか歌うかしてるのとでは顔の模様とか違うしなぁ……私としても、第40葉のは(冥界における)トナティウなんじゃないかって気がします。
 

そういえば、ヨワルテクトリの配偶神はヤカウィツトリだと紹介されていたという話を見たんですが、その典拠については私の手持ちの資料からははっきりしたことは判りません。
ただ、『メキシコの歴史(Histoyre du Mechique)』の「新たな創造」の章に夜の神々としてヨワルテクトリとヤコウィツトリ(ヤカウィツトリ)の名が挙げられています。で、その前の段落で紹介されている星の神々シトラルトナクとシトラリクエは夫婦とされているので、ヨワルテクトリとヤカウィツトリもまた夫婦であろうと類推されたんだろうかと想像しました。しかし、ヤカウィツトリはシトラリクエとは異なり女とは書かれてないんですが。 
なお、『メキシコの歴史』によれば、ヨワルテクトリは天界の第11層にいるとされます。
 

さて、シトラルトナクとシトラリクエの夫婦ですが、彼らは『クアウティトラン年代記』では(シトララトナク・シトラリニクエと呼ばれてますが表記揺れの範囲でしょう)トナカテクトリ・トナカシワトルなどと共にオメヨカンに住んでいるとされています。そして、シトラリクエとシトララトナクの息子たちの堕天についての記述が『テレリアーノ=レメンシス絵文書』『バチカンA絵文書』のイツパパロトルの項にあります。
『バチカンA』の方には息子たちの名前は挙げられてませんが、『テレリアーノ=レメンシス』によれば、天の園の薔薇を食べ木を折ってしまったため、イツパパロトルはシトラリクエ・シトララトナクの息子たちであるケツァルコアトル・ウィツィロポチトリ・テスカトリポカ・トナカテクトリ・ヨワルテクトリ・トラウィスカルパンテクトリと共に天界から堕ちたといった話があります(トナカテクトリが含まれているのは間違いだろうと訳者のコメントにはありましたが)。
 

話は変わりますが、『ヴィジュアル版~』によればヨワルテクトリはヨワルトナティウとも呼ばれたとのことなので、ヨワルトナティウについても調べてみました。
……が、これまた資料が手元になく……今のところ知り得たのは、『メキシコの歴史』バージョンの第三の太陽の名称だということと、『クアウティトラン年代記』に登場するスペイン人到着の折に天然痘で斃れた人物の名だということですが、後者はどう見ても人間なので今回の話題には関係ないでしょう。
 

ちょっと脇道にそれますが、ついでだから『メキシコの歴史』バージョンの天界の13層それぞれに結び付けられる神々についても紹介します。
 
—————————————————
 
 第1層  シウテクトリ
 第2層  シウトリ
 第3層  チャルチウトリクエ
 第4層  トナティウ
 第5層  5柱の神々トナロケ
 第6層  ミクトランテクトリ
 第7層  トナカテクトリとトナカシワトル
 第8層  トラロカンテクトリ
 第9層  ケツァルコワツィン
 第10層 テスカトリポカ
 第11層 ヨワルテクトリ
 第12層 トラウィスカルパンテクトリ
 第13層 オメテクトリとオメシワトル
 
—————————————————
 
シウトリとは大地の女神だそうですが、詳細不明。
ここではトナカテクトリ・トナカシワトルとオメテクトリ・オメシワトルとは同一視されてませんね。余談ですが、『絵によるメキシコ人の歴史』では赤のテスカトリポカ(カマシュトリ/ミシュコアトル)・黒のテスカトリポカ・ケツァルコアトル・ウィツィロポチトリはトナカテクトリとトナカシワトルの息子たちということになってます。
5柱の神々トナロケとはマクイルトナレケ(マクイルショチトル・マクイルマリナリ・マクイルクエツパリン・マクイルコスカクアウトリ・マクイルトチトリ)のことでしょうか? マクイルトナレケはゲームや快楽などを司る神々であり、太陽に同行する神格化された戦士達だと考えられているようです。
ケツァルコワツィンとは敬称付きケツァルコアトル、トラロカンテクトリはトラロックの別名だと思います。しかしトラロカンテクトリが「大地の神」とされていたのが気になる…水だけでなく山とも関わりのある神ではありますが。チャルチウトリクエとセットじゃないのも謎。
ちなみに、天界の各層と対応する神々については史料によって諸説あります。
 

……とまぁ、ごく限られた資料からではありますが、これまで見てきたところによれば、『ヴィジュアル版世界の神話百科 アメリカ編』のヨワルテクートリの説明には不正確な要素が多いように思われます。だいたい、ヨワルテクートリの字義は「夜の主」じゃないんですか。
とまれ、今回確かめられなかったものについても、また何か判れば書いていきたいと思います。
っていうか件の本、あれもチョコチョコ怪しい記述が含まれてるんですよね。ミシュコアトルと妻たちの辺りなんかもツッコミ所あるし(ミシュコアトルとコアトリクエの間に生まれたのはケツァルコアトルであってコヨルシャウキとセンツォンウィツナワ&センツォンミミスコアじゃないとか、チマルマンはミシュコアトルの放った矢によってではなく彼と一緒に寝ることによって妊娠したとか)。
ひとつの資料だけを鵜呑みにせず、いろいろ読み比べてみることが大事ですよね。もっとも、日本語で読める資料は少なくて、だから私もこうして苦労してるんですが……。
 

(追記…トナティウの配偶神についてはこちらの記事もご参照ください)
 

 <拍手返信>

>ライトさん
お尋ねの件ですが、マリオ3のDVDボックスは特に変わったプレイヤーを用いているわけではない我が家で観られるので、日本のDVDプレイヤーで再生できると思います。でもハリウッド版実写マリオのDVDは無理でした。

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