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ショチケツァルは最初はトラロックの妻だったがテスカトリポカが彼女を奪ったという有名なエピソードがムニョス―カマルゴの『トラスカラ史』にありますが、確か他にもピルツィンテクトリの妻だという話もあったよなぁと思っていくつかの資料を当たったところ、『メキシコの歴史(Histoyre du Mechique)』ではピルツィンテクトリの妻でショチピリまたはセンテオトルを産み、さらに彼らの子ではないがナナワトン(ナナワツィン)も育てたとか、『テレリアーノ=レメンシス絵文書』ではセンテオトルの妻だとか、いろんなバリエーションがあるらしいことが判りました。にも関わらず最初に挙げたバージョンばかりが紹介されるのは、やっぱりネタ的に面白いからなんでしょうね。そういえば『世界の神話百科アメリカ編』ではショチケツァルはショチピリの姉妹ないし女性配偶神とされていますが、この記述はゼーラーの「古代メキシコの宗教歌」にてショチケツァルがショチピリに相対するものとされていたり、ショチピリがセンテオトルやピルツィンテクトリと同一視されたりしていたことから来ているんでしょうか。
 
……とまぁこんなことをなんとなく考えつつ日々を送っているんですが、BIZEN中南米美術館(BLAM)の館長さん曰く「日本人の多くが持っている古代中南米に関する知識は大福で言えば美味しい中身をほとんど知らないまま薄~い表面の皮だけを食べてるようなもの。アステカ時代以前のメソアメリカの諸文化やマヤ文明の全体像や時代的深み、プレインカと言われるインカ以前のアンデス文明圏に咲いた諸文化のこと、そして日本には研究者すらいないような中間領域の実に個性的な文化の数々。それらがほとんど紹介されず、紹介されないから知らない。本当はそこが大福の美味しい部分なのに、皮だけ食べて満足してる」とのこと。私などはさしずめ「皮美味ぇ! 餡子も美味しいけどこの皮が好きだ!」と言っているようなものですが、しかしそれも餡子を少しでも味わってみたからこそなんだろうなとも思います。そして「皮が好きだけど餡子も食べたいよね。だって餡子も美味しいし」な気分になってきたので、またBLAMに行ってきました。BLAMが県内にあってよかった。いや、県外の方々にも観ていただきたいと思いますが。アクセスがあまり良くないのがなぁ……。
 
12/1より始まった『ペッカリーと愉快な仲間たち展』、初日に行ってまいりました。
古代中南米の諸文化を「ゆるキャラ」という観点から紹介してるんですが、これも古代中南米諸文化に対する興味を抱かせようとする工夫のひとつでしょうね。

 ↑『ゆるキャラさみっとin羽生』にて配布された資料の表紙
実際、日常生活において古代中南米を意識する機会はそうないだろうし(かくいう私も今に至るきっかけはたまたま『インカ・マヤ・アステカ展』の宣伝を見たことだったし)、こういうのなら取っ付きやすそうです。

 ↑ペッカリー(ヘソイノシシ)土偶
ペッカリー土偶はどうも副葬品ではなかったらしいですが、古代人も日常的にこういうものを眺めて和んでいたのかと思うと親近感が湧きますね。他にも、子供を抱いた母親をかたどった土偶を当時の記念写真のようなものだろうと展示パネルで言ってみたり、美術館とか出土品とかいった言葉が醸し出す堅苦しさ難解さを和らげようとしているのが感じられます。っていうか、あれこれ難しく考えるよりも、まずは作品から漂ってくる素朴さ・大らかさ・温かさ……などなどをこちらも素直に受け止めればいいんじゃないでしょうか。そんな気持ちになる展覧会でした。
もちろん、初心者にも親しみやすいだけでなくガチなマニアもじっくり見て楽しめるものです。

 ↑マヤ文明の王権の守護神カウィールを描いた土器
ところで、私が見に行ったときにはコンフント・アンデスによるギャラリーコンサートが行われていました。フォルクローレについてはあまり知識はないんですが、『コンドルは飛んでいく』『アンデスの祭り』『花祭り』などの私でも知っている曲があって嬉しかったです。以前ここで古代の笛の音を聞かせていただいたこともありましたが、地域・時代による違いこそあれやっぱり音楽は昔も今も楽しまれているものだなと改めて思ったものです。着ぐるみペッカリーがテーマソング「オイラ土偶のペッカリー」に合わせて踊ったりもしていました。


 ペッカリーの隣の海賊みたいな人はスペイン海軍の戦艦BLAMの館長もとい艦長
なお、ペッカリーやBLAMのことは来年1月9日(1月8日の深夜)午前0:25~0:45にNHK総合にて放送予定の『ドキュメント20min』で紹介されるそうです。全国放送です。踊るペッカリーも見られるのでお楽しみに!

 ↑取材の合間に休憩するペッカリー
 
そういえば、「古代メキシコの宗教歌」でも取り上げられているアタマルクアリストリの祭りの歌(『フィレンツェ絵文書』『プリメーロス=メモリアーレス』収録)、これのテキスト部分にはテスカトリポカは出てこないんですが、『プリメーロス=メモリアーレス』では挿絵の方に登場してます。花の咲く木に機をかけて布を織るショチケツァルの向かいに立っています。これはどういう意味のある図なんでしょう? テスカトリポカとピルツィンテクトリ・ショチピリ・センテオトルなどとの関連性・類似性についても調べてみたいです。

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