Tasteless Blog

前の記事のアステカネタを書いていて気になったんですが、ショチケツァルがピルツィンテクトリとの間にもうけた息子の話はあるけど、テスカトリポカとの間に生まれた子供の話ってあるんでしょうか。
アイリーン=ニコルソンの『マヤ・アステカの神話』にはウィツィロポチトリが彼を殺してしまえと要求したテスカトリポカの400人の息子たちを殺したことが書かれてますが、彼らは(黒の)テスカトリポカが一人で作り出したものなので、ショチケツァル及び他の妻たちは関係なさそうです。彼女の本には書かれてませんがl、彼らは黄・黒・白・青・赤の5つの色を持ち、天の第3層に住んでいるそうです。それはそうと、その話にテスカトリポカの400人の息子たちを出すなら、コアトリクエと4人の姉妹(名前は不明)は彼らと同時に作られたテスカトリポカの娘たちであることも言っておかないと正確さを欠いてしまうでしょう。ちなみに、これは『絵によるメキシコ人の歴史』版のウィツィロポチトリ誕生エピソードです。『フィレンツェ絵文書』版ではテスカトリポカは関わってきません。『マヤ・アステカの神話』の「羽をもつ蛇の誕生」は、『フィレンツェ絵文書』『絵によるメキシコ人の歴史』のウィツィロポチトリ誕生譚と『クアウティトラン年代記』『太陽の伝説』の(セ=アカトル=トピルツィン=)ケツァルコアトルの誕生にまつわる話から取捨選択したものを混ぜ合わせて書かれたようです(アイリーン=ニコルソンによればウィツィロポチトリは「ケツァルコアトルの後期アステカ版表現」「ケツァルコアトルの後継者」なので。もっとも、「『魔法使い、恐怖を与えるもの、生の秩序を乱すもの』であるとも言われる――しかし、これは彼をテスカトリポカとして見たとき、もっとよく当てはまる」とも言ってますが)。そこまでは判りましたが、「この物語の劇的な版の一つは、女神の名はラで、(後略)」の部分の出典が突き止められずもどかしい思いをしています。この本もちょくちょく元の神話をぼかしたりアレンジしたり改変したりとかしてるからなぁ……参考文献を詳らかにしていないのはツッコまれたら困るからかと疑ってしまいますよ。
ところで、『絵によるメキシコ人の歴史』ではウィツィロポチトリは最初は赤のテスカトリポカことカマシュトリあるいはミシュコアトル・黒のテスカトリポカ・ケツァルコアトルと共にトナカテクトリ・トナカシワトル夫婦から生まれていますが、後に処女コアトリクエの胎内に宿り再び生まれ、メシーカ人の神となります。つまり、ウィツィロポチトリは黒のテスカトリポカの弟かつ孫ということになります。そして、ウィツィロポチトリがコアトリクエから生まれるより前、チチメカ人の族長として自らも人間となったカマシュトリと出会いセ=アカトル(=トピルツィン=ケツァルコアトル)を生むことになる女性もまたコアトリクエの姉妹、テスカトリポカの5人の娘のうちの一人です。だから『絵によるメキシコ人の歴史』版セ=アカトルは赤のテスカトリポカの息子にして黒のテスカトリポカの孫ということに。
話は少し戻りますが、『マヤ・アステカの神話』ではケツァルコアトルはコアトリクエから生まれたとされています。確かに、『クアウティトラン年代記』ではトランを去ることになったケツァルコアトルが母コアクエイエ(コアトリクエの別綴)に呼びかけるくだりがあります。しかし彼の誕生を描いた箇所ではチマルマンが翡翠を飲み込んだことにより彼を身ごもったということになっています。チマルマンとコアトリクエは同一視されていたのか、それともコアトリクエは象徴的な「母なる女神」なのか……あ、そういえば、ムニョス―カマルゴの『トラスカラ史』ではケツァルコアトルはミシュコアトルとコアトリクエとの間の息子でしたね。他にも何かあるかはまだ調べられてませんすみません。この辺はいずれもう少し突っ込んで調べたいですが、今は措いておきます。『マヤ・アステカの神話』にて「処女のコアトリクエは、羽を集め、胸に当てた。別の物語によれば、母なる女神は、羽ではなくてエメラルドを呑み込むが、(後略)」とあるので、「母なる女神=コアトリクエ」と読めそうですが、これはおそらく『クアウティトラン年代記』のチマルマンのことでしょう。アイリーン=ニコルソンの本の記述がなぜそんな風になったかについては、前述したように彼女がケツァルコアトルとウィツィロポチトリの誕生エピソードを混合していて、かつコアトリクエの重要性を強調するためチマルマンの名は出さなかったからではないかと思います。
チマルマンとコアトリクエの関係ですが、彼女たちが姉妹とされている史料もあります。『バチカンA絵文書』によれば、「チマルマン・ショチトリクエ・コアトリクエの3姉妹がトランに住んでいた。シトララトナク神の使者が天から降りてきて、ショチトリクエとコアトリクエはショックで死んでしまったが、生き残ったチマルマンは息子を授かったと告知を受けた」ということです。ショチトリクエ(ショチケツァルとは別らしい)&コアトリクエ、なんか引き立て役というか、すごく雑魚臭い死に方……。

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.

Proudly powered by WordPress. Theme developed with WordPress Theme Generator.
Copyright © Tasteless Blog. All rights reserved.