Mario is Missing!

 そこそこゲームをやってそうな人に「ルイージの初主演ゲームは?」と尋ねたなら、『ルイージマンション』という答えが返ってくるでしょう。しかし、中には違うゲームの名を挙げる人もいるかも知れません。『Mario is Missing!』を。

 古くからのルイージファンなら名前くらいは知っているであろうこのゲームはアメリカで発売されたものですが、『マリオUSA』のように逆輸入されたりはしませんでした。そのため、私もあまり詳しくは語れないんですが、ネットで検索して見付けたレビュー・攻略記事その他から判ったことについて、少し書いてみようと思います。よく判らないのに紹介記事書いていいのかという躊躇はありますが、「コクッパ親衛隊」でもちょっと触れちゃったしなぁ。このコーナーいい加減放置しすぎだし。
 ……まぁそれはともかく。このゲームはSoftware Toolworks社によって制作されました。NES(海外版ファミコン)版・SNES(海外版スーファミ)版・PC版の3つがありますすが、一番言及が多いのはSNES版のようです。1992年にPC版、1993年6月にSNES版、7月にNES版がそれぞれ発売されました。
ゲームのストーリーは、マリオをさらい世界各地の歴史遺産を盗んだクッパ達にルイージが立ち向かうといったものです。楽しくゲームを進めるうちに歴史や地理の勉強ができるという按配です。

 ……「ちょっと待て」とツッコミが入ったような。
いや、このゲーム、レビューとか見てると、その……かなり評判悪いんですわ。「このゲームを買うのはお勧めしません。もしあなたが筋金入りのコクッパファンなら、借りてみるのもいいかも知れませんが」だの「悪い所:何もかも。なぁお前、このゲームは昨日の靴下みたいな臭いがするぜ」だのとひどい言われようです。一応褒めてる人もいることはいるんですが、少数派のようで。
 しかしここまで貶されているのを見ると、逆にどれほどクソなのか気になってくるのが人情です。という訳で、さらに調べてみることにしました。

 





 すみませんごめんなさい私はルイージファン失格かも知れません、このゲームは…まずいです……。
 ……ええと。あくまでラヨシュ個人の主観ではありますが、なぜ私が「『Mario is Missing!』はまずい」と思ったのか、以下に述べてみます。なお、参考にしたのはSNES版です。

 M オープニング・ストーリーが変
 いきなりかい? いきなりです。オープニングは具体的には下記の流れで。

『SMW』風のタイトル画面でいきなり地面に穴が開き、
マリオ南極に落下。
「君が落ちて来れて嬉しいよ、さぁ行こう!」……って、君らも落ちてきたのか?
再び穴。
「ここで待ってて、探しに行ってくる」
……と言って、城の中に入っていくルイージ。
そりゃヨッシーも混乱するわな。
ルイージもどこかに行ってしまったのでセレクト画面はヨッシーです。



 ストーリーはこんな感じです。
 「クッパ一味の魔の手がこの世界に伸びてきた。世界各地の歴史遺産を奪って売り払った金でヘアドライヤーを買い込み、南極の氷を融かして地球を水浸しにするつもりなのだ。ブルックリンの勇敢な兄弟はこのひどい計画を阻止すべく南極に乗り込んだが、マリオが罠にはまってしまった! ルイージのミッションは、カメ軍団を捕らえて略奪物を取り返し、街の人々と話したり地図を読んだりしてパズルを解くことだ」
 ゲームよりアニメの世界観っぽいですね。マリオ&ルイージがブルックリン在住とか、クッパの計画の内容とか。ドライヤーより自分や手下たちの炎を使ったり火炎放射器を作ったりした方がいいんじゃないかと思いますが、でもここで敢えてドライヤーという辺りがアニメチックだな、と。って、なんで最初からドライヤーを奪わないんだ、クッパ? ……あ、それを言ったらこのゲームの製作意図が無意味に……。それはそうとなんで最初マリオはマリオワールドにいたんだか。手分けして探していたような説明はなかったみたいなんですが。

 M グラフィック・音楽がいい加減
 『SMW』からの流用と描き下ろしとがあるんですが、統一感が感じられません。『SMW』の絵を使うならそれに合わせた絵を描くべきだろうし、オリジナリティを出したいなら一から描き直した方がいいでしょう。ああでも、描き下ろし部はなんだかマリオシリーズらしからぬ絵柄で違和感がぬぐえないんで、おとなしく『SMW』に倣っていてくれた方が嬉しいです。また、困ったことは他にもあって、ステージの背景が単調なので現在地が判り辛いです。メニューにステージマップがあるんですが、いちいち切り替えるのも面倒です。それから、音楽もやっぱり違和感があります。『SMW』のアレンジなんですが、なぜかマリオ感があまり感じられません。何か世界観が違うような。背景の単調さと相まって、プレイのだるさが悪化します。

 M アクションの爽快感がない
 「これはアクションじゃなくてアドベンチャーだ」とはいえ、大方の人はマリオシリーズといえばアクション的要素を期待するものだと思います。しかしこのゲームはひたすら街を歩いてばかりで、ジャンプしたり甲羅を投げたりといった動作はまったくないんです。時折遭遇するノコノコを踏んで歴史遺産を探したり、通行人と話して情報を集めたりするんですが、その間ひたすら歩いてばかりなんですよ。道の脇に並んでいる建物に入ることもできません。退屈です。しかも背景がほとんど変わらないからどこにいるのか判らなくなる。ついでにいうと、同じ人に何度も話を聞く必要があり、しかも人々は常に動き回っているので、そのつど追いかけなければならないのも面倒臭いです。

 M 鎌倉の大仏がホームレス
 「This Daibutsu used to sit in a small, wooden house but he was rendered homeless after a tidal wave(tsunami) washed it away.(この大仏はかつては小さい木製の家の中に座っていました。しかし津波がそれを押し流して以来、彼はホームレスになってしまいました)」って、そりゃ確かに大仏殿なくなってますが……まぁ、「住処を失ってしまった」とかいう訳にしておけば無問題でしょうが、辞書引いて真っ先に出てきた意味が日本語でもおなじみのアレだったもんで、つい。で、なんで鎌倉の大仏なのかというと、「東京」ステージがありまして、そこで集めるものが「Sensoji Lantern」「Sumo Apron」「Buhdda's Orange」なんです。しかし鎌倉は東京じゃないんですが(一応関東地方ではありますが)。あと、私は4年ほど東京都民でしたが、私が覚えている限りでは東京はあんなに「トヨタ」の看板まみれじゃありませんでした。まぁつまり何が言いたいかというと、スタッフはもっと日本について調べてくれと。音楽もいかにもな「欧米人がイメージする中国・日本」テイスト漂いまくりでしたしねぇ。……よくこんなのにライセンス許可したものです、ニンテンドー・オブ・アメリカ。

 M ルイージが無敵
 「ルイージファンの癖になんてことを言うのか」って? ……確かにウチはルイージファンサイトです。それに私のゲームの腕前はへっぽこもいいところです。しかし、物には限度ってものがあるでしょう。まったく死なないんじゃ緊張感は味わえない訳で。敵と遭遇してもすり抜けるだけってのは……ジャンプして踏めば敵はやられるんですが。コクッパでさえルイージにダメージは与えられません。彼らにできることといえば、部屋の中で逃げ回るだけ。勇ましく入ってきていきなりこれです。いくらコクッパファンの私といえども、おろおろと右往左往するコクッパの姿には正直ガックリしました。しかもグラフィックもいまいちだし。っつーか、なんでロイの甲羅が緑なんだよ顔ピンクなのに。首だけ挿げ替えたのバレバレ(溜息)。「ルドウィッグやロイは強いんだから、ルイージをぶちのめせばいいのに。イギーも…う〜ん……なんとかすればいいのに」とは、コクッパファンサイトで見かけた感想(雰囲気訳)。しかもクッパの扱いが……ロイを倒して城の最上階に辿り着き、取って付けたように床から生えているレバーを操作すると、奥からマリオが現われます。兄弟の感動の再会! と思いきやクッパ登場。いよいよ最後の戦い、これに勝てばマリオを救出できる。まぁこっちは死にゃしないけどな……と、いい加減だれつつも期待に胸を少しばかり躍らせるプレイヤーを尻目に、もう一度レバーを操作するルイージ。途端に床に大穴が開き、クッパはそのまま落下。そしてその穴から大砲が出現します。情けない面持ちできょろきょろするクッパを砲身に詰めて。「おい、これで終わりか? 本当に終わりなのか?」と焦る私の顔もきっと相当情けないです。そうこうしているうちにクッパは城外に射出され、雪原に埋まって凍りつき、そのまま砕け散ります。そしてたちまち始まるスタッフロール。ルイージのミッションはめでたく終了したのでした。プレイヤーなど放っておけばよろしいようで。

なんかルイージだけ浮いている気が。 この青いドレスの女性はデイジーだという話だが(あくまで噂。公式設定では「Curator(学芸員)」)、絵はピーチの色変え。もっとも、このゲーム用に描き下ろされるよりはマシなはず。ルイージとノコノコが接触しても平気なことにも注目。
マリオゲームの絵じゃねぇよこれ……。 ちなみに、横断歩道以外で道を渡ろうとすると、どこからともなくクラクションを鳴らされる。さすが教育ソフト。
右のルイージとなんか画風が違う。提灯の字も怪しいような。 トヨタトヨタ。
ロイの色もだが飾られてる鎧の頭身がちょい高めなのも気になる。 バイバイクッパ。



 ……いくらかでも雰囲気は伝わりましたでしょうか?
私としては、ディープでネタ心のあるルイージとコクッパいずれか或いは両方のファン、及びクソゲー愛好者ならこのゲームを楽しめるんじゃないかという気がします。それから、ひょっとしたらルイージ×デイジー者も……インフォメーションブースにいる青いドレスの女性はデイジーだという説があるので(青いのはきっと『マリオオープンゴルフ』の影響)。もっとも、私が言う「楽しめる」とは、開発スタッフが意図した楽しみ方からはおよそかけ離れているでしょうが。そして、やっぱり「ルイージの初主演作は『ルイージマンション』」ということにしておいた方がよさそうだとも思います。一般向けには。

戻る