シルバーパラダイス


 その日の別れは、言われてもしょうがない言葉
だった。
 「ルイージの・・・馬鹿!!」


 言葉もなく、しょんぼりと家に帰ったルイージ
に、不思議そうにマリオが聞く。
 「おい、どうしたんだよ、ルイージ」
 「うん・・・色々ね・・・」
 しょんぼりとしたまま、寝室に入る。
 「なんなんだ?アイツ」
 

 12月24日、会わないかと聞かれる。
 「24日?」
 「そう。クリスマスの日!あいてるわよね、ル
イージ!」
 あまりにも楽しそうな、その声と。
 対照的にルイージの声が落ちこむ。
 「ごめんなさい・・・その日は、仕事が入って
いて・・・」
 「仕事・・・?」
 笑顔のまま、表情が固まる。
 「はい。古い洋館の配管工事があるんです。向
こうの都合で、その日までに仕上げないと・・・」
 「・・・じゃあ、会えないの?1時間も?10
分も??」
 「無理・・・です」
 最後の拒否の返事をした途端、左頬に鋭い痛み
を感じた。
 「私より・・・仕事なの?!」
 「・・・」
 言葉が言えなかった。
 ・・・フォローする言葉を、一言でも言ってい
たら、まだ何とかなったかもしれなかったと、今
になって思う。
 「ルイージの・・・馬鹿!!」
 思い切り怒鳴って、帰られてしまった。


 「しょうがないじゃないか・・・ずっと前から
入っていた予定だし、代わってもらおうったって、
兄さんはピーチ姫とデートだし・・・」
 無理に落ちつこうとする。
 下手でも、理に適った言い訳の一つが出来れば
楽だと考え、無理矢理壁に向かって言い訳を続け
る。
 「僕だって、クリスマスに一緒に過ごしたくな
いわけじゃないんだ。けど、困ってる人を放って
おくわけにも行かないし・・・デイジーが困って
ないなんて思っちゃいないけど・・・」
 壁に向かってぶつぶつと自問自答を続けるルイ
ージを。やはり不思議そうな態度で、後ろからマ
リオが話しかける。
 「誰と話してるんだ?お前」
 「うわ!」
 腰を抜かす。
 「に・・・に、ににににににに、兄さん!」
 「おい、どうしたってんだよ。・・・ほら」
 助け起こす。
 「有り難う・・・」
 照れ笑いを浮かべて、ベッドに腰掛ける。
 「さっきからどうしたって言うんだ?俺が相談
に乗れる事なら、いくらでも乗ってやるぞ。ん?」
 「うん・・・」
 隣に座り、顔を覗きこむマリオ。
 「兄さんは・・・クリスマスは」
 「おう!ピーチと二人っきりでパーティを開く
ぜ!こう・・・一本の蝋燭を挟んで、二人で見詰
め合って・・・」
 「最後にその蝋を垂らされて」
 「そう「女王様とお呼び!」・・・って!!何
で俺とピーチがそんな事しなきゃならないんだ!!」
 「相っ変わらず、ノリ良いねぇ」
 あまりにも嬉しそうだから。
 つい、茶々を挟んで話をはぐらかす。
 「ノリの問題じゃねぇだろ?!・・・まあ、良
い。お前達はどうすんだ?」
 「え・・・実はさ」
 打ち明けようとする前に、マリオのマシンガン
のような話のスピードに、流される。
 「やっぱり、こう、ルイージなら、家に呼んで
二人で料理作ってパーティって方が似合うな!よ
し、そうしろそうしろ!!兄さんは家を1日中空
けてやるから!!」
 「あっ・・・」
 「それとさぁ。プレゼントは何が良いと思う?
俺だったりしたら、ピーチに「メリー・クリスマ
ス!」って言葉と共に鼻にチュッでも良いんだけ
どさ。やっぱ女の子ってプレゼント必要だろ?そ
う思って考えるんだけど、なっかなか思いつかな
くてよぅ。花・・・じゃ、クリスマス時期になる
とあんまり良い物が入ってないし、じゃあ服。っ
て言うと、サイズが分からないし。聞きゃあいい
かなーとか思うんだけど、やっぱりその日までは
秘密にしておきたいだろ?な?」
 「うん・・・指輪なんか、良いんじゃない?」
 とうとう圧倒され、マリオの話の聞き役になる。
 「指輪?かーっ!!良いねぇ。さっすがルイー
ジ!!羨ましいぜ、このぉ!」
 肘で突つく。
 「そんな事ないよ。・・・僕も、付き合ってあ
げようか?」
 「おう!じゃあ、早速今から出かけようぜ!
・・・良かったよ。俺一人じゃ選んだとしても、
トンでもないもん選んじまいそうだからな。その
点、お前はセンスが良いから安心だし。いやー、
助かった助かった」
 本当に、これでもかと言うほど嬉しそうだから。
 結局言い出せずに、マリオの買い物に付き合っ
た。
 何時間もかけて選んだ指輪は、とても綺麗な装
飾で。
 喜ぶピーチ姫の顔が、細部にわたるまで想像が
出来た。



 結局マリオは23日から出かけ(どうやら、食
料の調達が目的らしい)。それに合わせるよう
(実際は工事が今日からだったから)ルイージも、
郊外まで出かけた。
 

 洋館はとても古く。
 数年前に少しだけ改築した際、配管は丈夫にと、
コンクリートの中に鉄で出来た水道管を入れたら
しい。
 最近、水漏れがひどいとの事。
 「当然ですよ。そんなことやったら、好きなだ
け錆びてくれって言っているようなものです」
 主人はひどい業者に怒り猛り、抗議の電話を入
れていたが、多分繋がらないだろう。
 それにしても、24日までに仕上るのだろうか。
 七面鳥の料理にも困るだろうし。
 それよりなにより、出来るだけ早く帰って、恋
人の傍にいたかった。
 「出来るだけ早く、頑張らないと」
 助っ人にとワリオに電話したが、何処かの女海
賊と出かけるらしい。ワルイージにも電話したが、
一笑に附されて終わってしまった。
 「どうせ独り身なんだから、手伝ってくれたっ
て良いのにさ」
 文句を言いながらも、手は進める。
 台所だけでも今日中に終わらせたい。


 結局。イブの夕方まで工事はてこずり。
 最終確認にと、外に出て暫くして。
 雪が落ちる。
 「・・・今年の賭け、当たったなぁ」
 後は、出したはがきが選ばれれば良い。
 賞品は・・・パスタセットだった気がする。
 「お兄ちゃーん!!終わったぁ??」
 「うん。あと少しだよ!」
 丸1日以上いたせいか。ここの主人の子供と仲
良くなった。
 ほんの少し手伝ってくれたが。スズメの涙だっ
た事は内緒にする。
 「・・・終わり。お母さんに、もう水を普通に
捨てても大丈夫だって言ってくれる?」
 「うん!」
 パタパタと足音が遠ざかっていく。
 「・・・積もりそうだなぁ」
 両手に息を吹きかけながら呟く。
 マリオ達は、「ホワイト・クリスマスだ」と喜
ぶだろう。
 でも・・・。
 「デイジーは、どんな気持ちで見るのかなぁ?」
 今から帰って、土管を通って。サラサランドに
行って、城に入りこんで・・・
 「・・・限りなく、不審人物だ」
 がっくりと肩を落とした。
 「さて・・・料金を貰わなきゃ」
 洋館の中に入る。
 と。
 「お兄ちゃんも、ウチでパーティやろう!」
 「・・・え?」
 主人からは毛布を渡され、夫人からは微笑んで
頷かれ、子供からは甘えられる。
 「でも、僕は親類でもないし・・・それに・・・」
 「でもさあ、お兄ちゃん、彼女に振られちゃっ
たんだろう?」
 「!」
 最近の子供はマセている。
 昨日、クリスマスの予定はとしつこく聞かれ、
隠す事でもなかったので、恋人に仕事があるとい
ったら殴られたと正直に答えた。
 が、
 振られたとまでは言っていない。
 ついでに、認めたくもない。
 「ごめんなさいねぇ、クリスマスにこんな仕事
を頼んじゃって」
 「あは・・・あはは・・・」
 夫人から、本当に申し訳なさそうに謝られて。
 自然、困った笑顔になる。
 「それに、今から帰るのでは事故が心配です。
ご迷惑でなかったら、どうぞ泊まって行って下さ
い」
 「・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
 そう答えるしかなかった。


 七面鳥もプティングも素晴らしく美味しかった。
 思わずレシピを聞いてしまったルイージに、家
族は笑っていた。
 シャンパンを空け、ゲームをやって。
 次の日の別れに、子供は大泣きする事となった。
 「すいません。ご馳走してもらった挙句に、料
金まで貰って・・・」
 返そうとしたが、拒否された。
 「いえ。今度からお宅をひいきにしますからね。
この位当然ですよ」
 「あ・・・どうも」
 特上の笑顔で返す。
 マリオが言うには、その笑顔に揺らめく女の子
が結構いるらしい。
 気にした事がないから、分からないが。
 「お兄ちゃん・・・もっと居てよぉ・・・」
 抱きついたまま、離れない。
 「また、何か異常があったら来るからね」
 「それじゃあ、当分来ないじゃないかぁ!!」
 ごもっともな話。
 「そうだね・・・」
 これで、すぐ来るようでは自分の腕に問題があ
る事になってしまう。
 それでも何とか説き伏せて、その洋館を後にす
る。
 取敢えず。可愛いぬいぐるみを買っておこう。



 奮発して、自分の身長近くはある、くまのぬい
ぐるみを買った。
 トランクには入らず、諦めて車の上に括り付け
た。



 家に帰って。
 冷蔵庫からパンを一枚。焼きもしないで食べて、
ベッドに転がる。
 視界に土管が入ったが、寝返りを打って、見な
いようにする。


 「やっぱり夜に忍びこむしかないかなぁ・・・」
 サンタクロース?
 緑色の??
 思わず想像して、笑う。


 退屈紛れにニュースをつける。
 「・・・」
 さらに退屈になった。


 チャンネルを変えると、お決まりのラブストー
リーがやっている。
 女の子が、ずっと待ちつづけている。
 ずっと。
 ずっと。
 ずっと。
 「・・・僕も、行かなくちゃ」
 立ち上がった途端、台所から悲鳴が聞こえる。
 「な・・・何?!」
 慌てて台所に駆け込むと。
 「デ・・・デイジー!」
 「あは。・・・鍋、焦がしちゃった」
 真っ黒なパスタ鍋と、座り込んだデイジー姫。



 何が起こったかワケが分からなくなって行く。
 何故、彼女がここに?
 「いつ、来たの?」
 我ながら、気の利かない質問だと思う。
 「1時間くらい前。マリオからルイージの好き
なパスタの作り方を聞いて。ルイージに話しかけ
たんだけど、溜息ばかりで返事してくれないから」
 「え?その・・・すいません」
 お辞儀付きで謝る。
 「私こそ、ごめんなさい。・・・私ね、あの後、
ピーチの所に行ったの」
 「うん」
 話を聞く体制に入る。
 「そうしたら、言われちゃった。「いっつもワ
ガママを聞いてもらってるんだから、許しなさい。
25日に、改めてパーティーをすれば良いでしょ
う?」って」
 「うん」
 「でも・・・寂しかったから・・・」
 「うん・・・!」
 涙ぐむデイジーを抱き寄せる。
 指に、切り傷が多く見える。
 「24日の日、ピーチの所にもう一回行ったら、
マリオが居るから・・・。ルイージは仕事なのに
って・・・マリオに言ったら、凄い驚いた顔をし
てた。それで、マリオとピーチと一緒に帳面を調
べて、ルイージの行った所まで三人で行ったのよ」
 「うん」
 「見に行って、本当は文句を言おうと思ってた
の。でも、ルイージ・・・すっごく一生懸命仕事
しているの見たら、何にも言えなくて・・・
私・・・」
 「・・・」
 「それで・・・マリオが気を利かせてくれて、
レシピを教えてくれたから。作って待ってようと
思ったら、ルイージが居るじゃない。でも、話し
かけても気付いてくれなかったから、驚かそうと
思って」
 「・・・」
 「でも、私料理苦手だから。焦がしちゃった」
 困ったような笑顔を浮かべるデイジー。
 「そう・・・だったんだ」
 「鍋、洗うの大変よね?」
 「まあ、それは」
 曖昧に頷いて、傷だらけの手を見詰める。
 「ルイージ?」
 「・・・」
 口を近付け、傷口に唇を当てる。
 そのまま血を吸い出すと、ポケットの中に入っ
ていたバンソウコウを取りだし、傷口に貼る。
 「大きい傷だけだけど・・・気休めにはなるよ
ね?」
 「え?ええ・・・」
 突然の事に、呆然としていたが、我に返って赤
い顔で頷く。
 「出掛けようか。近くに、良いレストランがあ
るんだ。いつか、君と一緒に行こうと思ってた」
 同じように赤い顔で。いつもより、さらに口調
が少なくなる。
 「ええ」
 「あとね、一応プレゼントも買ってきたんだ」
 「あの、ぬいぐるみ?」
 「それもだけどね。少し、気が変わったんだ。
前に、兄さんに頼まれてピーチ姫に似合そうな指
輪を探したんだけど、その時、君に似合そうなの
も見付けてた。ちょっと高いから諦めたんだけど
さ、今そんな事言ってる場合じゃないよね。だか
ら・・・ちょっと無理して買うことにしたよ」
 少しそっぽを向いて。
 椅子に掛けてあったコートを取り、肩に羽織ら
せる。
 「ルイージ。ね、その指輪」
 確かめようとするデイジーの言葉に、自分の言
葉を被せる。
 「貰って欲しいな。僕の重大決心だから」





 

 世の中こんなんだったら苦労しないよね。
 パターンもパターンだけど、パターンも
また修行(笑)。
 心からこのカップリングは好きなので、
ルイマンにも正直出て欲しかった今日こ
の頃。
 スマブラDXのフィギアの説明で、恋人
と書いて欲しかった今日この頃。
 そして、隠れキャラとして出て欲しかっ
た今日この頃。
 今度のゲームでも出てきてくれないか
な?と思う今日この頃。(しつこい)

 これがばれたら任天堂に訴えられるかな?
と恐怖に怯える一瞬でもあります。
 が。
 しょーがねーじゃん、本気で書いても書
いても書き切れないほど好きなカップリン
グなんだから・・・!



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